2020.09.11

バッフェット氏が日本人でないワケ

以前このようなタイトルでセミナーを行ったことがあります。もしバフェット氏が日本人で、日本市場でのみ投資活動を行っていたとしたら、あれほどの素晴らしいパフォーマンスをあげることが出来ただろうかという内容の問いかけでした。当時日本株は長期に亘って右肩下がりを続けており米国株と対照的になっていました。失われた20年といわれた時代です。この問いかけの結論は、国の経済が成長を続けることが出来なければ、バフェット氏であっても思うような成果をあげることは出来ないというものです。20年に亘るGDP推移(アベノミクス前まで)を日米で比較すると一目瞭然です。

今回のブログも同じタイトルですが、問いかけ内容は異なります。このところ何度か報じられているようにウオーレン・バッフェットが日本の商社株5銘柄を5%取得していたことが明らかになりました。ナゼこのタイミングでこれまで買ったこともなかった日本株を買ったのか、そしてナゼ商社株なのかということについてです。

新聞やネットなどで伝えられているところでは日本株は米国株に比べて割安である。そして商社は鉱山などの資源への投資が多く、バフェット氏の投資先との親和性が高いというものでした。投資家はどんな銘柄にナゼ投資するのかを発表する義務はありません。また本当のことを言う必要も無いので、本心がどこにあるかは分かりません。

殆どの日本人投資家は商社株を投資対象とは考えていなかったと思われます。コロナの影響で株価が大きく調整した銘柄は多数あり、商社株もその中の1つというくらいの位置付けではなかったでしょうか。商社株の特徴の1つとして予想配当利回りが高いということが挙げられます。バフェット氏の買った5銘柄も3~5%程度配当利回りがあり、買いに動いた時期はもっと前のより安い時であったはずなので、高い配当利回りが確保できることは間違いないと思われます。しかし商社は多くのリスク資産を抱えておりその資産価格評価下落によって多額の償却損が発生するという現実もあるので、積極的に買い進めるには二の足を踏むというのが日本人のスタンスではないでしょうか。

それでは米国人であるバッフェット氏にとって、日本株をポートフォリオに入れると判断した誘因は何でしょうか。ドル価値の低下に対するリスクヘッジではないでしょうか。米国はコロナ対策に巨額の財政出動をしており連邦債務は26兆ドル、GDP比126%と二次大戦直後を上回る過去最悪の水準まで膨張と報じられています。今後も失業や経済停滞を避けるため追加的財政支出は避けられないことでしょう。多額の債務は発行される米国債によってファイナンスされているので、膨大な債券の利払い抑制のためにも金融緩和を続けざるを得ません。金融緩和の継続はドル価値の減価に繋がります。米ドルの価値下落が起きる可能性が高いと考えるなら米国株への集中投資はリスクとなります。一方、株価が割安であることに加えドル安円高が実現するなら日本株からのリターンはさらに期待できることになります。

今回のコロナショックにおいてもバフェット氏がどのような銘柄に投資するのか、多くの投資家が関心をもって見守っていました。驚いたのは、最初に買いを入れたのが米国の航空機株だったことでした。いくらバフェット氏が買ったからといってこの状況下、追随して買う気にはなれないセクターです。しかし二か月もしないうちに保有していた全ての航空機株を売却するという方向に転じました。誤ったと思ったら機敏に動き、正直にそれを伝えるという誠実さは健在でした。

その後暫くして、金鉱山の株への投資が伝わってきました。これまで金については、金利を生まないということを理由に一貫して金保有に否定的であったことから推測するに、コロナ影響下における投資はこれまでの延長線上にはないと判断したのかもしれません。
金鉱山株を買ったのも、ドル価値が下落するリスクを避ける為と考えると納得がゆきます。

コロナ感染の拡大で「世界は変わる」としているバフェット氏。しかしどんなに世界が変わろうとも間違いなく変わらないことがあります。それはバフェット氏がアメリカ人でなくなることはないということ。「バフェット氏が日本人でないわけ」に対する究極の回答でした。