「マネー・ショート 華麗なる大逆転」感想と疑問

映画はリーマンショック発生の原因となった米国不動産バブルと、そうした不動産への抵当権担保証券(MBS)の欠陥に気付いたヘッジファンド・マネージャーがこれを売るべき(ショート)との確信を持ったことから、同じ効果を発揮出来る関連商品(CDS)を使って勝負をかけ勝利するに至ったプロセスを描いた実話ストーリー。



リーマンショックがどのように引き起こされたのか、その引き金となった金融商品はどんな欠陥を持っていたのか等、難しい話を分かりやすく解き明かしています。専門用語は美女が出てきて解説してくれる等の工夫もあって、2時間超の映画を退屈することなく楽しめました。(美女の裸体と手にしたシャンパンにはグッときて解説の内容は殆ど頭に残っていませんが。)



MBSの欠陥に気付いて「ショート」にかけたヘッジファンド・マネージャー達の心理状況が見どころです。不合理であるとの確信をもってCDSを仕入れる為訪問した投資銀行では、自らの見解を説明するや、そんなはずはないと馬鹿にされ変人扱いされます。必ず下げると確信していたMBSは上昇を続け、組成したファンド利回りは悪化の一途。出資者からも背を向けられ返金を求められ、訴訟まで起こされます。



最終的には「ショート」にかけた少数派の判断は正しかったことがあきらかになり、価格は暴落を始めます。しかしMBS関連商品を大量に保有、CDSを提供等していた証券や銀行には莫大な損失が積み上がり、世界中のカネの流れが止まる寸前の大パニックに陥ります。「ショート」にかけたヘッジファンドは大きな利益を手にするのですが、世界を恐慌寸前まで追い込むきっかけを作った罪悪感のようなものを内包した苦い勝利であったように描かれています。



この映画は一度観ただけなので、どこまで正確にお伝え出来ているかわかりませんが、個人的な感想と疑問を書いておきます。

(感想)

マーケットの趨勢に逆らって投資することのストレス、そして何よりも権威に対抗して自らの判断を貫き通すことの過酷さなどが体感できる映画でした。

(疑問)

格付け機関(スタンダード&プアーズやムーディーズ等)がMBS等のリスクを正当に評価し、妥当な格付けをしていれば不当な価格、関連商品の過剰な拡大は防げたはずです。分析して妥当な格付けを行い、投資家に情報提供するのが仕事である格付け機関が何故ヘッジファンド・マネージャー以下の判断しか出来なかったのか、不明です。