2019.10.18

倒錯の世界

リーマンショック後、世界の中央銀行は金利引き下げによって金融危機からの脱却を目指してきました。しかしショックの度合があまりにも大きかった為金利引き下げだけでは足りず、量的緩和策(QE)をも導入して市中に出回るマネーの量を増やし続けました。


それでも経済浮揚効果が十分でないと見て、幾つかの国々はマイナス金利まで踏み込んでいます。(日本は2016.2実施、その他、EU、デンマーク、スウェーデン、スイス等)これ等一連の政策は民間銀行からの貸し出しを増やし、マネーが実体経済に十分に行き渡ることを目的としたものでした。


ところが世界に溢れ出たマネーは2018.7から始まった米中貿易戦争等による景気減速を恐れ、安全性が高いと考えられた債券に流れ込み債券のマイナス利回りが発生しました。マイナス利回りというのは(債券を)買う側が金利を支払うという倒錯の世界であります。


なぜかくも不思議なことが実現するのかと言えば、債券満期を迎える前にさらに高い価格で買ってくれる買い手が現れる(ババ抜き)か、中央銀行が買い取った価格より高く買ってくれると考えている(マネーの逆流)からに他なりません。今や日本のみならずフランス、ドイツ、スイス等の国債もマイナス利回りとなっており、世界に流通している債券残高の1/4がマイナス利回りという債券バブル状況にあります。


このようなプロセスは債券を大量に保有する民間銀行の採算を悪化させ、借り入れと貸し出しの金利差縮小により融資に資金がまわらない等の悪循環を生み出しています。これまで、金利を下げれば景気は回復に向かうというのが当然の考え方であり政策でもありましたが、今や下げ過ぎの金利水準(reversal rate)は金融仲介機能を阻害し逆効果になるのではないかという疑念を産んでいます。


倒錯の世界の次に来るかもしれない暗黒の世界。そのような暗渠に陥らない現実的方法はマネーを実経済に回すこと。その為には設備投資や貿易、消費を阻害している主たる原因、貿易戦争を止めることを急ぐべき段階にきています。