2015.05.05

価格の無常について

「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし」鴨長明の方丈記の有名な一節で、移りゆくものの無常をうたったものとされています。



話はいささか世俗的になりますが、株価も時々刻々と値を変えて株価ボードで点滅を続け、「とどまりたるためしなし」を実感させられます。株価というものはよどみに浮かぶ泡沫のようなものなのでしょうか。



価格が絶え間なく変わるのは市場で売りと買いがぶつかって、値付けが行われているからですが、個人、機関投資家、金融機関、海外投資家など市場への参加者の売買基準は異なります。

株価は企業の価値なのでその本質的価値に収斂してゆくはずですが、それでは企業の本質的価値とは何でしょう。色々な説がありますがここでは保有資産+稼ぐ力と考えておきます。前者の保有資産はバランスシートに出ているので誰が見ても同じ数字になります。



問題は後者の稼ぐ力。会社は経済活動をすることで利益を得ているので、長期的に利益を維持、成長させられる能力が稼ぐ力と言えるでしょう。市場参加者は企業の稼ぐ力に着目して売り買いの決断をしているはずですが、企業の稼ぐ能力判断は投資家によって異なるというのが実態です。株価が変動する1つ目の理由です。



株価を動かすもう一つの要因は需給関係です。例えば法人投資家なら決算対策の売買があるでしょうし、ファンドならファンド出資者の意向により左右されます。リーマンショックでファンド出資者からの解約が相次いだときには、返済資金確保の必要から本質的価値の高い銘柄から売却して返済資金を確保するということは実際に行われました。たとえ本質的価値が高い銘柄であっても売られざるを得ないという状況は往々にして起こります。従って、短期的需給関係による価格は株価の本質的価値とは無関係です。



市場で勝ち組となる秘訣は、企業の本質価値にこだわり続け需給関係による値動きに無頓着でいることだと思います。株価が下落したとき、株価ボードに表示されている価格が本質的価値より大幅に低いと判断できれば、思い切って買えばよいのです。いずれ株価は本質価値に収斂してくるので利益は自ずと買い手のものとなります。

人は市場の大幅な下げに直面した時恐怖にかられます。損失が拡大するのは嫌なので恐怖から逃れようという心理が働き、売却に走るのでしょう。しかしそのような心理に抵抗することが出来なければ勝ち組になることは難しい。そして下落の恐怖感から自由でいられるポイントは、保有する銘柄が市場で表示されている価格以上の本質価値があるという確信です。



価値と価格は必ずしも同じではありません。日常の買い物でも安くてお得とか、割高という判断をしているわけですが、この場合比較しているのは同じような他の製品であったり、これまで商品についていた値札だったりします。スーパーで大根を買うならこれでよいでしょうが、投資の世界に同じ感覚を持ち込むなら決して報われることはありません。この世界ではむしろ価格のウラをかくくらいがちょうど良い。そしてこのような行動を担保するのが「本質価値」判断なのです。