2021.06.07

在庫の過剰は損のもと?

過剰に在庫を持つと、原価率が高くなり利益を圧迫するので適正在庫を心がけなければなりません。一方、在庫が少なすぎると売れる機会を逃してしまい得られたはずの利益を失います。最適な在庫量は、自社の製品に対する社会からのニーズがどのくらいあるのかを的確に判断できるかにかかっています。


これは「言うは易く行うは難し」の典型のようなもので、各社とも試行錯誤を繰り返しています。最近はAIが需要予測に有効との認識に基づき、過去のビッグデータを分析することで最適在庫を算出する企業が増えてきているようです。


AIに頼らずとも適正在庫を保ちコストを的確にコントロールしてきた企業として、トヨタ自動車が挙げられます。「カンバン方式」とよばれ、生産ラインである部品が不足しそうなら看板に表示してメーカーから都度供給してもらうことで、部品在庫を持たずに生産を円滑化する方法として広く海外でも認知されています。


ところが最近になって、適正在庫を追求することが生産の制約となる状況が発生し始めました。自動車産業界を大きく揺さぶっている半導体の世界的不足です。社会の半導体に対する需要はデータセンターや携帯電話等をはじめとする高度な半導体需要において増加の一歩を辿ってきました。台湾のTSMC等、半導体製造企業はフル活動に近い稼働を続けてきましたが利益率の高い高性能半導体の製造を優先させてきたため、自動車用半導体が後回しとなり供給が制約される状況となっています。


半導体の生産は不足しているからすぐに増やすということは容易でなく、需要に追いつくまでには少なくとも2〜3年くらいのタイムラグが出てしまようです。新車の生産が制約された結果、なんと中古車価格が高騰するという事態が発生しました。需要予測にAIを使うというトレンドが起きている中、AIを動かすに必要とされる半導体の需要予測が出来なかったという皮肉な現象の結果です。


コロナワクチンの普及に伴って、様々な分野で需要が一挙に拡大しそうな局面に来ています。一方、供給はすぐに追いつくことが出来ず不足が生じるという事態が今後も増えてくると思われます。在庫不足対策として需要予測が喫緊の課題となりますが、ビッグデータがあって初めて力を発揮するAIに将来の予測は可能でしょうか。過去に例のない今回のような事態には人間の判断力でAIの不足を補うしかないのかもしれません。


世界の経済が正常化する局面においては、在庫の過剰よりも不足が損失につながると腹を括り、十分過ぎるほどの供給量を確保することがひいては利益につながると思われます。