くいの残らないマンション販売法

下請け業者のくい打ち工事データ改ざんにより、くいの一部が地盤に届いていなかったことが明らかとなり、マンション販売業者は自社負担で住人に対して保障を提示し始めたことが報道されています。新聞紙上ではデータ改ざんが起きた原因として2つのポイントが指摘されました。(2015.10.25日経)


1.工期に厳格なマンション業界の体質。施工の現場がどんなに苦しい事態に陥っても
 販売会社は工期の見直しに応じてくれない。完成前に売り始める「青田売り」が
 基本で引き渡しは転勤、入学を控えた3,9月に集中しがち。仮に予定日までに工事
 が終わらないとクレームが発生する。

2.利益確保には工期を短くして資金回収を早めることが腕の見せ所となる事業構造。
 用地取得などの資金を借入でまかなうので、金利負担増加や資金ショートを避ける
 ためにも工期を短くして資金回収を早めないと、利益が圧迫される。

構造的な問題は2.の方により多くあると思われます。
どのような解決方法が考えられるでしょうか。


日本の慣行では購入者は代金の殆どを完成時に支払って引き渡しを受けることになっているので、完成するまで業者には現金が入ってきません。マンションの販売から完成までには相当の期間がかかりますが、販売業者にはこの期間自己資金か借入で耐えなければならないということになります。また資材急騰や労働力不足などにより完成遅延が見込まれそうな場合、そのリスク(費用負担)は全て業者が負うことになるでしょう。


海外では異なった販売慣行が実施されているのが散見されます。売買契約を締結した購入者は何回かに分けて支払うというものです。購入者は最初に頭金を支払いますが、その後は工事の進捗度に応じて資金を業者に支払ってゆくのです。

例えば土台が完成した段階で10%、フレームワークができた段階で次の15%、壁が立ち上がり窓枠や扉枠の設置段階で追加10%、等と支払を分割して行い部屋が完成して入居できるようになったら最後の何パーセントかを支払って引き渡しを受ける。通常8回くらいに分けて支払うという形が多いようです。


この方法の場合、くいの長さ不足のような問題が発生したら土台の完成が遅れるので購入者は問題の所在を知ることになるでしょう。販売者は土台完成延期という短期間の金利負担や資材再調達等の負担は発生しますが問題を隠してでも工事を続行する誘因は生まれにくいでしょう。



業界の慣行や法律が問題の本質だとすれば、同じような事例は他にもある可能性が
あります。今後再び似たような事例が出てこないという保証もありません。
多くの人にとって一生の買い物となる住居であればなおのこと、今回の事例は深堀り
して対策を講じる必要があると思います。