2015.06.12

ヴェネツィア 富と権力

世界の歴史に多大な影響を与えた地域はどのように生まれてきたのか、そこにはいくつかの共通項があるようです。現代ではアメリカのシリコンバレーが代表的ですが、中世ではルネッサンス文化の開花に大きく貢献したイタリアの諸都市、中でもヴェネツィアはその代表ともいえるでしょう。ルネッサンス文化を支えた富と権力はどのように獲得されてきたのでしょうか。



結論から先に言うと、ヒト・モノ・カネ・風土が生んだというのが私の仮説です。最近読んだ本「バランスシートで読み解く世界経済史」(ジェーン・グリーソン・ホワイト)にヒントがあったので、この本を参考文献として考えてみます。



15世紀中ごろ、十字軍による聖地エルサレムの奪還が叫ばれ騎士団は聖地をめざしましたが、その通リ道であったヴェネツィアは中世交易の中心となっていきました。交易はヒトとモノの流れを意味します。アドリア海に面した港という立地も海上交易の拠点としてヒト、モノを引き付けたことでしょう。



中世のヨーロッパは宗教の影響が強く教会は融資の際、固定金利を付けることを禁止していました。「ヴェネツィアに誕生したダティーニは為替手形により教会の目をかいくぐり、国際的マーチャントバンカーとして貿易と信用のネットワークを構築。それにより産み出された巨大な富が建築、美術、学問に投じられた。」かくしてカネの面からもヴェネツィアはルネッサンスの資金供給源となったのです。



風土の面からヴェネツィアに富と権力をもたらしたのは実利主義といえるでしょう。「ヴェネツィアは中世ヨーロッパにおいて、パリ、ナポリに次ぐ3番目の規模を誇っていた。ヴェネツィアは他の都市国家と違い、教会の支配よりも商業を優先、異教徒オスマントルコとも講和条約を結んで争いに巻き込まれることなくビジネスを続けた」のです。



この本の副題「double entry」は複式簿記のことですが、ルカ・パチョーリというルネッサンス時代の修道士、数学者によるもので、パチョーリはレオナルド・ダビンチに数学を教えた人でもあったようです。複式簿記は現代でも世界中のビジネス実務で使われていますが、ビジネスの結果生み出される成果を記録、把握する為の基本的インフラです。パチョーリというヒトがヴェネツィアに誕生したことがヴェネツィアの経済的発展を後押ししたのは間違いありません。



十字軍遠征という宗教的背景を利用し交易を行う一方、教会の権威や支配には距離を置くというしたたかな戦略。これにより獲得したモノやカネ、それを背後から支えたヒトや風土によりヴェネツィアは栄え、ルネッサンスは花開きました。ヒト・モノ・カネ・風土はビジネス、投資を成功に導く本質的要素であることを示しています。